ゆみとり

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暗夜に霜の降るごとく

今週のお題特別編「はてなブログ フォトコンテスト 2014夏」 

こんな所に行ってきました。

 

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東北の山の中です。


どれくらい山の中かと言うと、目的地に向かっている最中に道路が舗装でなくなり、ガタゴトガタゴトと進む内に「あれ、道間違えた?」と二度は地図を確認してしまうくらいの山の中。ほぼ一本道なんですけれども。

 

石に乗り上げて、優雅にひなたぼっこに興じているのはカワニナ。綺麗な水にしか棲まない、小さな巻き貝です。

 

彼がいると言うことは、彼を食料として狙うオニヤンマのヤゴや沢ガニがいるという事で、さらにそれを食べるイワナやヤマメ、オイカワなどの美味しい山魚もここにはたくさんいます。

 

ちなみに、私はヤマメが一番好きです。身が柔らかくて皮も薄く、塩を振って焼くと絶品。生臭さもありません。

震災の影響もあって、ここ三年程は川釣りをする人もほとんどいないため、それはそれは大きな良いヤマメがたくさんいました。美味しそう。

 

これまでヤマメは釣った人からもらっていましたが、今では釣る人が減ったため、どうしても食べたくなったら自分で釣るしかありません。しかしヤマメは釣れば食べられますからまだいいです。震災後もっと入手しづらくなった食べ物。それは鹿です。

 

猟師さんの中には鹿肉がそんなに好きじゃないという方も多いと聞きますが、私は断然猪より鹿派です。鹿がいらないなら分けてくれ。

 

脂身が少ないのに柔らかく、食べ応えがあって臭いもしません。一頭で何人もの人をお腹一杯にすることができ、角などはお守りやキーホルダーになったりしてくれます。

 

でもコレ、釣り道具じゃ捕れないんだ……orz

 

捕ってる人はすごいですね。野生動物、しかも自分よりずっと大きかったり強かったり、速かったりする生き物を仕留めてくるんですよ。的に当てるのとは訳が違います。

 

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昔々、銃を撃つ機会があったのですが、意外と私は着弾が良い方でした。教えてくれた方が仰っていたのですが「弾が当たる奴は変な奴が多い!」とのこと。そうですか大変ありがとうございました。

 

「変な奴」で一括りではあんまりだと思うので、その内容を私なりに解釈してみますと

 

銃というものはすごい速さで弾丸を撃ち出し、遠くの標的に当てる事ができる道具である。戦国時代の銃ならいざ知らず、今作られている銃は正しい姿勢で正しい方向に向けて撃てば必ず当たる事になっている。が、この「正しい姿勢で正しい方向に撃つ」ことがとても難しい。

 

人間、弾を当ててやるという野心、当たるだろうかという不安、照星と照門(銃口の上の方に付いている、照準を合わせるための突起)が合った、今だ!という心の動きに伴う体の反応は消す事ができない。

 

体が心の動きに合わせて反応するのを止められない以上、弾を的に良く当てる奴という者は、そもそもそういった心の動き、いわゆる雑念というものが少ない奴、若しくは射撃の体勢に入ってから着弾し、それを自分の目で確認するまで、様々な感情や考えが自分の中に入ってくるのをシャットアウトさせる事のできる奴なのだ。

 

しかし、そんな奴は基本普段からちょっと変わっている!

 

という事を仰りたいのだと私は解釈しました。そしてそれは多分正しいのだと、その後しばらくかけて思い知る事になります。

 

やっぱりね、色々考える事やストレスなんかがあると、当たらないんです。これが。

 

私は手が小さくて薄い方なので、最初は良く当たっていても、その内掌が衝撃で痛くなってきますし、こればっかりはいくら「衝撃を体全体で受け止めろ!」とか言われても限界があります。やはり男の人とは体の厚みや強さが違いますね。

 

そうなると、照準を合わせている段階ですでに体が痛みを予想して堅くなってしまいますし、「ガク引き」と言って、引き金を勢い良く引いてしまいます。もう当たらない。

 

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この記事のタイトル「暗夜に霜の降るごとく」は引き金を引く時の心構えを夜に降りる霜に例えたものです。

 

冬、真っ暗な夜に霜が静かに降るようにそうっと、獲物も、周囲も、自分すら気づかない程静かに引き金を引け。

 

気持ちとしては「照準を合わせてじっとしていたら弾が出ていた」位が正しい撃ち方なのだそうです。

 

それで話が冒頭の画像に戻ってくる訳なのですが、このカワニナ、可愛いですよね。しかし、これ撮るのにかかった時間がですね……

 

……10分弱ですorz

 

今のデジカメには大体手ブレ機能が付いています。それでも乱れまくる画像。何回やってもガク引き、いやガク押しする私の人差し指。

 

携帯の電波も届かぬ山の中、流れる清流に膝まで浸かり、腰を屈めて石を撮り続ける女。しかも10分弱も。端から見れば、随分と奇妙な光景だったことでしょう。通りかかった人でもいれば、幽霊や妖怪の類に見えたかも知れません。

 

でもですね、撮れないんです。手ブレ機能などと言う、痒いところに手が届く現代の文明の利器をもってしても、冷たくて速い流れ、動く対象物、耳を通り過ぎる蚊の羽音、膝裏を噛む虻が与えてくれる鈍い痛みetc.……耐えきれません、心が。

 

この先どれだけ科学技術が進歩するか分かりませんが、この先も当分の間は「機械があっても、最終的にそれをどうにかするのは人間」の時代が続くんじゃないかと思わされた一時でした。

 

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キツネノハナガサ。れっきとしたキノコです。

狐の花笠なんて、可愛らしい名前ですよね。姿も名前に負けず劣らず可憐です。

 

尚、三脚とか買えばいいんじゃ……とか言う心の声は無視します。